第一部は東音会の竹内亜紀氏によるワークショップ「長唄のいろは」。長唄は三味線と唄とお囃子で構成されている。当初、江戸時代に歌舞伎の伴奏だったが、次第に独立した純粋音楽として楽しまれるようになった。最初に新潟県人が農業ができない冬の時期に全国を回って披露したという「越後獅子」。次いで雨音や風音など雰囲気を示す効果音をお囃子で実演、さらに長唄が街にあふれていた江戸の四季を演奏する。春「花見踊」、夏「菖蒲浴衣」、秋「秋の色種」、冬「都風流」。江戸時代の人が感受性豊かに過ごしてきたことが感じられる。最後に、参加者を交えた長唄の習いが行われた。「供奴」の最初の部分を練習する。思いっきり空気を身体に吸い込んで、大きな声を出すのが基本で、健康にもいいと言われている。最初は一部の経験者の声しか聞かれなかったが、練習を繰り返すうちに参加者の声が一体化、迫力ある「供奴」が会場に響き渡った。「自分たちの文化を知って、他国の文化を知って違いを理解することがグローバル化の始まり。日本の情緒を理解するきっかけになれば幸い」と竹内氏は締めた。第二部は歌舞伎俳優の中村紫若氏による歌舞伎舞踊「藤娘」。舞台はベニヤ板を敷いただけという簡素な作りだったため、決して環境は万全とは言えなかった。しかし、手を差し伸べれば役者に届きそうなほど、間近で見る中村氏の熱演に、参加者も十分に満足したようだ。第三部の懇親会では、写真家の内藤忠之氏による「sakura」をテーマとする写真パネル、華道家の池坊美佳氏による生け花が飾られ、京都・伏見の銘酒「月の桂」、京料理「花楽」などが振る舞われた。至るところで、参加者が交流を深める光景が見られた。さらに、“お年玉”として中村氏によるシャンソンの熱唱もあり、参加者を大いに喜ばせた。
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